ドイツの幼児教育といえば、なんといっても「シュタイナー教育」が有名でしょう。近年では日本でも時々、この教育法を取り入れている幼稚園を見かけます。
このドイツ生まれの幼児教育法は、同国の哲学博士で神秘思想家でもあるルドルフ・シュタイナー(1861年~1925年)が、アントロポゾフィー(人智学)という思想に基づいて提唱した教育思想・実践方法です。
この思想のもっとも大きな特徴は、人間の成長を7年おきに区分している点でしょう。まず7歳までが第一7年期で「意思の成長」、次の14歳までが第二7年期で「感情の成長」、21歳までが第三7年期で「思考の成長」とされています。
つまり彼の幼児教育とは、この第一7年期の教育にあたるものです。昨今の日本でよくある、小学校に入る前から文字や算数を教えるような英才教育とは異なり、その時期の成長に見合った教育を行うことが重要とされています。
具体的にどのような保育をしているのか調べてみると、幼稚園によってまちまちなものの、絵の具で絵を描き色彩を通して心を育てるとか、詩の朗読や音楽に合わせて体を動かす「オイルトミー」を取り入れるなど、とにかく「感性・感覚」を重視している点が共通しているようです。
日本ではまだ一般的に取り入れられているとはいえないシュタイナー教育ですが、では実際にドイツでは幼児教育にこの方法を実践しているところが多いのでしょうか。
調べてみたところ、ドイツでもシュタイナー教育の幼稚園は、普通の幼稚園より少数派のようです。家庭にテレビを置かない、アルコールを摂取しない、オーガニック食品を食べるなど、いろいろ厳しい決まりごとも多いので、やはり厳密に実行するのは少々難しいのかもしれません。
また、もうひとつドイツの幼児教育で有名なものといえば、「フレーベル幼児教育」です。これは同国の教育者フリードリッヒ・フレーベル(1782年~1852年)によるものです。
この教育法は、幼児の本質的なものである神性をどのように伸ばすかということに着目しています。これは当時、特にドイツで盛んだったロマン主義に基づく考え方なので、日本人にはなかなかピンとこないかもしれません。
しかし「幼稚園(Kindergarten)」(「子ども達の庭」の意)という名称は、実は彼の造語であり、今も世界中の国々で、幼児教育のための学校をこう呼んでいます。
またフレーベルは、幼稚園では遊びを中心にして、そのための道具を用意し、花壇のある庭を必ず設置すべきだと唱えました。この主張を受け継いで、現代の日本の幼稚園でも必ずお遊戯やお絵かきがあり、花壇や園庭が設置されているのです。
このように、フレーベルが後世にもたらした教育への影響の大きさ、また彼の考えに基づいて1840年に誕生した「一般ドイツ幼稚園」が、世界初の幼稚園であることなどを考えると、まさにドイツは幼児教育発祥の地ともいえるのかもしれません。
シュタイナーやフレーベルの教育法については、関連書籍も数多く発行されています。小学校に入る前に読み書きや計算ができるようにならなくては…などと躍起になる前に、一度このような幼児教育の原点に触れてみるのも良いのではないでしょうか。